負 け 戦 




「何も要らないからもういいよ。」





天秤にかけた相手と自分との感情に怯えている

扉は限りなく閉じてゆく

しんと静まりかえった部屋で

やけに伸びた脚の爪が歪む



気付く迄に僅かばかりの時間を費やす

また一人 これは負け戦



事実を述べる事が出来たなら

実際事実なんてもんは知らないさ

心の何処に隠れてる

そもそも心なんて何処にあるのか



自分の事のよで

他所様の事のよで

幸せかい

生きてるかい

聞こえてんのか返事をしろよ




顔の見えない人達の

得体の知れぬ感情にすがりつき

それを愛だと疑いもせず

要らない感情ばかりが積もり積もって

本当に欲しい気持ちは、




心は何処にやったろう

残念ながらこの躰に備わった本能だけが

唯一素直に愛を欲している

誰でもいいなんて虚言だ

言葉は嘘を孕んで



「何も要らないからもういいよ。」



あの時手を差し伸べられるのを待っていた

閉じられた扉の向こう期待だけが燻ぶっていた

本当にそうして要らないものになってしまうから




また一人

これは負け戦
























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